スペインの習慣として、よく知られているのがシエスタ(昼寝)。夏のサマー・タイムでは、午前中の仕事は午後二時前後までで、そのあと、学校や勤務先からいったん帰宅し、昼食後、シエスタと呼ばれる休息をとる。そして、夕方からまた仕事を再開する。さすがは暑い国の習慣だと思っていたら、じつは、このシエスタの習慣、もとからスペインにあったわけではない。もとはといえば、アラブの習慣なのだ。スペインの地は、八世紀から十五世紀まで、イスラム教の勢力圏となっていた。そのイスラム教徒たちの故郷のアラブ社会には、やはり、昼食後に休息をとる習慣がある。アラブ社会の昼寝の習慣は、たんに昼間が暑いというだけではなく、放牧生活から生まれたものだった。ヒツジやヤギなど、アラブの遊牧民たちの家畜は、もっとも暑くなる真昼の時間帯、草を食むのをやめて木陰で休む。それで、人間も、家畜たちに合わせて真昼は休み、夕方、家畜たちが活動をはじめると、人間も働く。ここから、昼食後に昼寝をとる生活サイクルが生まれ、これがスペインでも定着したというわけだ。この習慣も、一九六〇年代からの経済発展につれ、しだいにカゲをひそめたが、アラブの影響の色濃く残るアンダルシア南部では、夕食前のパセオ(散歩)など、かつての習慣が今も残されている。
観光化された地域から少し離れたところでよく見かけるのが、密集したココヤシである。これは何のために植えてあるのかというと、工業用原料。つまり観光に続いてヤシの樹を植える第二の目的は、生活のためなのだ。繊維質の剛い毛で覆われているヤシの実の外側は、タワシやホウキ、ロープの材料になる。また実を割った内部の白い部分(コブラ)は乾燥させて食用油や石鹸の材料として主に中近東方面に輸出する。日本でも“ヤシからナテラ”のCMでおなじみのように、洗剤として使われているのだ。樹液は観光用のジュースとしてはそれほど旨くないのに、外国人客に飲ませるだけでなく草木染めとしても使う。大きな葉は、パネル状に木枠に張りつけて家々の建築材料(壁)に使われる。それで造った家は普段は涼しい。だが台風シーズンにはひとっ飛び。そのため、フィリピンの島部では台風が吹き去った翌朝、あらかじめ用意していたヤシの葉の壁材を売り歩く業者が出没する。またパラオやヤップでは葉を編んで作ったバッグやマットも土産品店で売られている。このようにヤシの樹は観光用にしても工業用にしても、南の島々の人々の現実の生活にしっかりと根を下ろしているのだ。
芸能では、舞踊が盛んで、ここのところ、安室奈美恵に代表される芸能人がたくさん出ているのもこれが地下水脈になっているのだろうか。農業の中心は米でなくサトウキビだが、黒砂糖を使った菓子などに独特の味わいがある。料理は中華料理の変形で豚を多く使うが、昆布を多用して薄味なのが特徴。腸を千切りにして澄まし汁にしか中身汁など沖縄らしい。また、本土で鶏をつぶすのと同じ感覚でヤギを自分たちで捌いて刺身や汁にする。本土の人には、単純に暑いところというイメージがあるが、夏の日中はそんなに暑いわけではない。そのかわり湿度が高くて夜も温度が下がらない。春は雨が多いが秋はさわやかである。冬も風は強いが暖房が必要なほどの気温には滅多にならない。こうした気候とあくせくしない風土、それに薄味でバランスのとれた健康的な郷土料理(琉球料理のことを地元ではこう呼ぶ)のお陰で平均寿命は全国でもトップクラスである。県民性は、物事を突きっめて考えずに適当なところで折り合いを付ける傾向が強く、仲間内で助け合うというかかばい合うところがある。このため、ストレスがたまらず居心地がよいが、ややルーズで厳しさには欠けるのも事実である。